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人身事故
アメリカのテロ事件の翌日の出来事。
劇団の練習に向かうために、電車に乗っていた。会社帰りの時間なので、結構混み合っていた。僕は幸運にも椅子に座れたので、音楽を聴いていた。と、突然、電車が急ブレーキをかけた。
「ただいま人身事故が発生しました!」
車内放送がそう言っていた。僕の乗っている電車が人をひいてしまったようだ。練習場所には遅れると連絡をいれて、再び動き出すのを待っていた。窓の外では、たくさんの人があわただしく動き回っている。微妙に電車が前後するので、車輪にまきこまれたようだ。
しばらくして突然、寒気とも違う、まるで血の気がひくような感じがした。立っていたら、力が抜けて倒れていたかも知れない。そんな時はいやな予感がするものだ。
しばらくして、電車は動き出し、僕は練習場所につくことができた。練習が終り、仕事も終えるともう朝になっている。帰宅するころにはもう普通の人達が仕事を始める時間になっている。そんな中僕は眠りにつこうとしていた。そして、その時、それは来た。
突然電車の中で感じた血の気のひくようなあの感じ。もはや手を動かす事すらできない。金縛り。以前感じた金縛りとは比べ物にならないくらい強い意識があった。僕も負けずに右手を無理やり動かした。少し動いた。と同時に重さも無くなっていったが、まだ体の上に気配がある。このまま追い返すのもかわいそうだと思い、少し会話をしようと思った。とはいっても、僕は霊の声を聞くことはできないので、「はい」「いいえ」で答えてもらおうと思った。「はい」なら右に移動「いいえ」なら左に移動、といった感じで。
まずは確認だ。
「あなたは昨日の事故の人ですか?『はい』なら右に来てください」
右に移動する気配があった。右手が少し重くなる。
「あなたは自殺ですか?『はい』なら今度は足の上に来てください」
気配は動かない。自殺ではないようだ。
「事故だったんですか?『はい』なら今度は左に来てください」
気配は左に動いた。左手が重くなる。しかし、はっきりとは動いていない。体の中心にも少し重さを感じた。苦しいのだろう。ためしに目を開けてみたが、全く見えなかった。再び目を閉じて問答を始めようと思ったが、目を閉じた時点で、もう何も聞くことは無くなった。
「僕はあなたに何もしてやることはできません。霊を感じる事しかできないんだから。だけど、あなたのために祈ってやる事はできます。もう苦しむ事はないんですよ。明るい方へ行って下さい」
そう言うと、すぅっとからだが軽くなりました。事故だったんですね。まだいろいろやりたいこともあったでしょうに。かわいそうですね。僕はただ祈る事しかできません。僕を守ってくれる仏様は阿弥陀如来らしいので、最後に唱えました。
南無阿弥陀仏
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